キングスマン

見てきた。正直見る前から、薄々前作は超えられないんじゃないかと思ったが、予想通りというか、それ以上に微妙な気持ちにさせられる点が多くエンドロールで考え込んでしまった。

しかしここでまた一つ考えるべきことが浮かぶ。それは、二作目と比較されるキングスマン一作目の魅力とは一体なんなのか?ということだ。キングスマン面白い!最高!アクションすごい!だけで終わらせてしまっては、二作目のなにが面白くなかったのか?について考えることはできないはずだ。そこで、今回はキングスマンGCを観た後に考える、キングスマン一作目の魅力と二作目との差異について考えていこうと思う。

 
主人公エグジーの成長物語という大筋 

後半の教会F◯CK大量殺人と威風堂々爆発パニックの印象が強く残って忘れがちだが、キングスマン一作目の大元のストーリーの始まりはイギリスの貧困層で腐っていた青年、エグジーが謎のハチャメチャ強い英国紳士にその才能を見出され...という成長物語だ。なにも持っていなかった普通の青年がその才能を開花させ、鼻持ちならない坊ちゃんどもをどんどん実力で蹴散らしていく。この過程が気持ちいいのだ。度々課せられる試練もスリルがあり、かつ大筋から外れていないため純粋に楽しめる。この試練を課す側、マーリンがかなりの鬼畜なのだが、憎めないのもこれまたいい。

このように、道に転がっていたただの石ころだったエグジーがマーリンやハリーといった魅力的な大人と世界に出会い、磨かれていくことで、キングスマンの一員となる。そこにワクワクするのだ。

 

教会での大暴れシーン

ここが私が一番好きなシーンであり、ラストの爆発シーンより賛否分かれるシーンかもしれない。確かに倫理無視超不謹慎なシーンである。しかし、だからこそ興奮する、しかもこのシーンをコリンファースが髪を乱し、感情のないキリングマシーンとして演じきっている。

ここで重要なのは、「ハリーが敵方に操られ、正気を失っている」という部分だ。これまで余裕綽々とゴロツキをいなし、どうやらすごい実力を秘めていそうだが、マナーと品格を保ち、自分を制御できるハリーの「本気」。しかも感情なしリミッターブッ壊れの全部がここで無理やり爆発させられる。観客は、目の前で繰り広げられる惨状めまぐるしく気持ちよさすら感じさせる戦闘シーンに脳からなにか分泌されているのと同時に(ハリーどうしちゃったの?)という動揺と困惑が同時に頭の中で混ざり合って、興奮している間に戦いは終わり、そしてハリーは敵のピストル一つであっさり殺されてしまうのである。映画というより、もはやジェットコースター体験に近い。絶対に負けるはずがない無双シーンから、急に相手の強い敵に殺されるわけでもなくただピストルの弾1発で殺される。この緩急が爽快なのだ。

 

エグジーがスーツを着ることの意味 

二作目こそ初めから着ているスーツだが、一作目でスーツを着、メガネをかけて戦うエグジーを見ると、ぐっと胸にくるものがあるのではないだろうか。そう、スーツを着てエージェントとして戦っていること自体が一作目全体で描かれてきたエグジー成長の最終段階であり、その姿が亡き師匠ハリーに重なって見えるからである。バレンタインのアジトに忍び込み、一人で大勢の兵士を相手にするところが、私は大好きである。もちろんガゼル戦の一進一退の攻防戦、少しの緩みが勝敗を決する緊張感もいいのだが、やはりエンターテイメントとして、アクションとして、一人で多勢を相手に無双するというのは魅了されるし興奮する。追い詰められた逆境でこそ力を発揮し、しかも、魅力的で斬新な武器の数々だけでなく、エグジー本人の戦闘能力や身のこなしによって相手を倒していくのだ、かっけー!!エグジー!!となるのは当然だし、興奮もする。そりゃあする。

 

 

以上が私が思い出せる限りのキングスマン1の魅力だが、総じていうならば、

《エグジーの成長物語という王道かつ確実に面白いストーリーをベースに、非常にわかりやすい「悪の敵」に対して、遠慮0容赦0で残酷とも言える程に無双することの爽快感・興奮》

ということになるのだと思う。なるほど、自分でまとめてみて、私がGCに抱いていた不満の正体がはっきりわかった。私はキングスマン2に求めていたものとの差があったから楽しめなかったのだろう。

私はおそらく、成長物語・師匠の死を乗り越えたエグジーが、ランスロットやマーリンのほか、メチャメチャ強い他のキングスマンメンバーと一緒にあらゆる敵をボッコボコにするという爽快感を求めていたのだ。

しかしGCでこの爽快感の役割を担ったのはアメリカ、ステイツマンで、キングスマンは常にしてやられる側だった。相手にやられてばっかりのエグジーも、ハリーも、仕事を奪われて意味のない殺され方をするマーリンも、きっと私は見たくなかったのだろう。また、今回の話は前回ほど大筋がないため(強いて動機があるとすれば早く仕事を終わらせて彼女のところに帰りたい くらいのもの)、いろんな行動に疑問が浮かび、少しとっちらかった印象を受ける。

などブツブツブツ文句がこのままだと永遠に出続けるのでここで止めておこうと思う。

 

もっと面白くなるだけの設定とキャラクターのある映画だったので、正直違う形の続編が見たかったなと思う。